借金の消滅時効とは?完成の条件や注意点を解説

借金の消滅時効とは?完成の条件や注意点を解説
  • 更新日:2024年05月14日

「借金の消滅時効」という制度があるのをご存じでしょうか。
簡単にいえば、消滅時効が完成(成立)すると、借金の返済義務がなくなるという制度です。この制度を利用するには条件があり、問題なく認められるための注意点もあります。

本記事では、借金の消滅時効の概要や時効完成の条件、押さえておきたい注意点、時効以外の借金の解決策について解説します。

借金の消滅時効とは、請求などを受けずに一定期間が経過すると返済義務がなくなる制度

借金の消滅時効とは、債権者(お金を貸した人)が債務者(お金を借りた人)に対して請求や通知をしないまま法律で定められた期間が経過すると、債権者の法的な権利を消滅させられる制度です。
つまり、一定期間が過ぎると債務者は借金を返さなくてもよくなることを意味します。

この消滅時効が完成する期間に関しては、2020年4月に施行された改正民法で、新しいルールが定められました。
具体的には、「債権者が権利を行使することができることを知った時点から5年間、その権利を行使しないとき」または「権利を行使することができる時点から10年間、その権利を行使しないとき」の、いずれか短いほうが経過した場合に時効が完成します(民法第166条)。

金融機関や貸金業者からの借金では、契約書に返済期日が明確に記載されているため、債権者は返済期日になれば権利を行使できることを知っているとみなされます。
このため、基本的には5年が時効完成に必要な期間(時効期間)となります。

なお、改正前の制度では、金融機関や貸金業者からの借金に対する時効期間は5年で、個人間での借金の場合の時効期間は10年とされていました。
業者からの借金の消滅時効の期間は変わっておらず、個人からの借金の消滅時効の期間は、2020年の改正によって変更されたことになります。
そのため、2020年4月1日より前に発生した個人からの借金の時効期間は、原則として改正前の民法が適用され、現在でも10年となります。

時効が完成するケース

時効

借金の消滅時効が完成するためには、期間経過以外にも条件を満たさなければなりません。下記の3点の条件がすべて満たされている必要があります。

返済期日から5年または10年が経過している

借金の消滅時効が完成するには、債権者が一定期間、みずからの権利を行使しないまま時間が経過していることが必要です。
この消滅時効の開始時点は起算点とも呼ばれ、債権者が債権の回収を求めることができる日からカウントされます。通常は、契約書などの文書に明記された返済期日が基準とされます。

債務者が一度も返済していない場合は、原則として契約書の最初の返済期日が時効の開始時点です。
つまり、返済期日を超えてから5年が経過していると、その借金に関する債権者への返済義務が消滅する可能性があるということです。

一方、一度以上返済を行っていたものの、途中から何らかの理由で返済を停止した場合は、時効のカウントは原則として「最後に返済を行ったあとの直近の返済期日」から開始されます。この最後の返済日から数えて5年を過ぎると、その時点で時効期間が経過することになります。

このように、時効の開始日は返済の状況によって変わるため、債務者が時効について確認するときは返済の履歴や記録を調べて時効期間を正確に把握することが重要です。

裁判や支払督促、催告などが行われていない

時効の完成には、裁判や支払督促、催告などが行われていないことも条件のひとつです。時効期間が経過していても、債権者が裁判などの法的手続をとった場合には、時効の進行がいったん停止されたり、進行がリセットされたりすることがあります。

法律で決められた理由によって時効の完成が一時的にストップし、先延ばしになる制度を「時効の完成猶予」と呼び、時効の進行がリセットされる制度を「時効の更新」と呼びます。借金の消滅時効に関して、完成猶予や更新が起きるのは、下記のようなケースです。

裁判を起こされた場合

債権者が債務者に対して裁判を起こした場合、その裁判が終了するまで時効は完成しません
借金の返済がない場合に起こされる裁判には、例えば、借金の支払いを求める「給付の訴え」や、債権の存在を確定させる「確認の訴え」などがあります。訴えが取り下げられた場合などは、その時点から6ヵ月が猶予期間です。

裁判の結果、債権者の権利が確定した場合には時効が更新され、新たに時効期間がスタートします。
裁判で権利が確定した場合、リセット後の時効期間は10年という特に長い期間となっているため、注意が必要です(民法第169条)。

支払督促が申し立てられた場合

債権者によって裁判所に支払督促が申し立てられた場合も、その手続が進行しているあいだは時効が完成しません。支払督促とは、債権者が債務者に対して金銭の支払いを求めるための法的手続の一種です。
支払督促の申立てを受けた裁判所は、債務者宛に「支払督促」という書面を送付します。これは、金融機関や貸金業者が送るいわゆる督促状とは法的な位置づけがまったく異なる書面です。

この書面が届いた場合に2週間以内に債務者が異議を申し立てなければ、債権者は仮執行宣言の申立てができるようになり、その申立てを受けて仮執行宣言がなされると強制執行できるようになります。

加えて、債務者が異議の申立てをしない場合は債権者の権利が確定したことにもなり、時効期間がリセットされてしまいます。

強制執行が行われた場合

債権者が債務者に対して強制執行を行った場合、その手続中は時効が完成しません
強制執行とは、裁判で勝っても判決どおりの支払いが行われない場合などに、債権者が裁判所で手続をすると国家権力が債務者の財産を差し押さえて、必要があれば競売などでその財産を売却し、強制的に支払いを実行させることです。

強制執行が行われても全額の返済ができなかった場合は、残額についての時効期間がリセットされます。

仮差押えが行われた場合

債権者が仮差押えを行った場合、その仮差押えが終了した時点から6ヵ月間、時効は完成しません
仮差押えとは、債権者が裁判所で手続をして、債務者の財産を事前に確保しておくことです。仮差押えをされた財産は、債務者が勝手に処分することができなくなります。

催告書が届いた場合

債権者が債務者に対して支払いを求める催告を行った場合、その催告から6ヵ月間、時効は完成しません
催告とは、債権者が債務者に対して返済を要求する通知のことです。
催告の方法は法律上定められているわけではありませんが、一般的には内容証明郵便という「いつ、どのような内容の文書が、誰から誰に送られたか」が記録に残る方法で送られてきます。

催告書が届くと6ヵ月間は時効の進行が止まってしまい、債務者が何も対応しなければ、6ヵ月経つ前に債権者から支払督促や裁判などの法的な手続を進められてしまうのが一般的です。
そのため、催告書が届いたら時効の完成は難しくなるといわざるをえません。

なお、上記の各項目以外にも、天災によって裁判や強制執行ができない場合などでも、時効の完成が一時的にストップします。

債務を承認する行動をしていない

時効の完成の条件として、債務を承認するような行動をしていないことも挙げられます。
債務者が債務の存在を明示的に認めるような行動をすると、時効の更新が起こり、時効期間をリセットさせることになってしまうため、注意しなければなりません。
具体的には、借金の一部返済、支払いの猶予の相談、示談などの行為が、債務の承認にあたります

督促状などが届いた際に、時効期間の確認をせずに債権者に連絡して支払う意思などを見せてしまうと、もともと時効が完成していた場合であっても時効がリセットされてしまい、本来は返済する必要がなくなっていた債務を返済しなければならなくなるおそれがあります。

時効が完成しても援用しなければ債務は消滅しない

時効が完成していたとしても、それだけですぐに借金の返済義務(債務)が消滅するわけではありません。債務を消滅させるには、援用という手続を行う必要があります

援用とは、債権者に対して「時効が完成しているため返済しない」という意思を伝えることです。
時効を援用すれば、借金がなくなり、一部の信用情報機関から事故情報が抹消されます。また自己破産と比較して、手間がそれほどかからないという特徴もあります。

援用のための意思表示は、口頭で行っても法的には問題ありません。しかし口頭で行うとあとから「言った、言わない」の水掛け論に発展する可能性があります。

こうしたトラブルを防ぐため、内容証明郵便で「時効援用通知書」という書面を送付するのがおすすめです。

ただし、この「時効援用通知書」は、借金を特定できる情報などをできる限り正確に記載しなければなりません。また、債権者とのやり取りをしているあいだに、誤って債務の承認をしてしまうリスクもあります。
そのため、正確かつ適切に手続を進めるには専門家である弁護士に依頼するのが無難です。

時効の援用について詳しくは、以下のページをご覧ください。

時効以外の借金の解決策

解決策

消滅時効は、債務者にとってメリットの大きい選択肢です。
しかし、実際に時効が完成するには、返済期日になっても債権者が何も行動をとらず、5年以上の期間が経過するなどの条件がそろっていなければなりません。
そのため、時効による借金の消滅のためには、高いハードルがあります。
とはいえ、時効の完成だけが借金の解決策ではありません。
借金に悩んでいる場合は、債務整理という方法によって借金を減額したり、返済を無理なく進めたりすることも可能です。債務整理には、下記の3つの方法があります。

任意整理

任意整理とは、債権者と直接交渉を行い、返済額や返済期間を再設定する方法です。債務整理と混同されやすい用語ですが、債務整理の一種であり、3~5年間での完済を目指します。

任意整理について詳しくは、以下のページをご覧ください。

個人再生

個人再生とは、裁判所の関与のもとで返済計画を立て直し、一部の借金を免除してもらう方法です。住宅などの財産を残すことができ、借金を最大5分の1から10分の1に圧縮できる可能性があります。

個人再生について詳しくは、以下のページをご覧ください。

自己破産

自己破産とは、裁判所に収入などの状況から借金返済がほとんど不可能であることを認めてもらい、残った借金の全額を免除してもらう方法です。
ただし、この手続を利用すると、一定期間は新たな借入ができなくなるなどの制約も発生します。また、住宅や車といった高額な財産はすべて処分されます。

自己破産について詳しくは、以下のページをご覧ください。

任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理を行うには、金融機関や貸金業者、裁判所などとの交渉が不可欠です。破産法や民事再生法といった法律の専門知識も必要になるため、法律の専門家である弁護士に相談して必要な手続を代行してもらうのが、もっともスムーズです。

債務整理について詳しくは、以下のページをご覧ください。

時効が完成していそうな場合は、弁護士に相談しよう

時効が完成しているかどうかを判断するには、法律の専門的な知識と、債務の承認が行われていないかといった事実確認のプロセスが必要です。
援用などの手続を進めて、実際に時効を完成させるためにも、専門知識をもった弁護士のサポートが欠かせません。弁護士に相談すれば、仮に時効が完成していなかったとしても、債務整理についてのアドバイスや手続の支援も受けられるでしょう。

アディーレ法律事務所では、豊富な借金問題解決の実績をもっており、時効を援用する際のサポートや、状況に応じた最適な債務整理の方法をご提案しております。借金問題にお困りの場合は、お一人で悩まずに、ぜひご相談ください。

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監修者情報

谷崎 翔

弁護士

谷崎 翔

たにざき しょう

資格
弁護士
所属
第一東京弁護士会
出身大学
早稲田大学法学部,首都大学東京法科大学院

困りごとが起きた時,ひとりで考え込むだけでは,どうしても気持ちが暗い方向に向かいがちで,よい解決策も思い浮かばないものです。そのようなときは,ひとりで抱え込まないで,まず専門家に相談することが,解決への近道ではないでしょうか。どのようなことでも結構ですので,思い悩まずにご相談ください。依頼者の方々が相談後に肩の荷を降ろして,すっきりとした気持ちで事務所を後にできるよう,誠心誠意力を尽くします。

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