家賃滞納はいつまで大丈夫?強制退去の目安や支払えない場合の対策

家賃滞納はいつまで大丈夫?強制退去の目安や支払えない場合の対策
  • 更新日:2024年05月14日

家賃の滞納は、生活の基盤に関わるような深刻な問題を引き起こすおそれがあります。家賃滞納を数回繰り返してしまい、強制退去という事態に陥ることは避けなければなりません。

本記事では、強制退去させられない家賃滞納期間の目安や、強制退去以外のリスク、滞納から強制退去までの流れ、どうしても家賃が支払えないときの対応策のほか、借金が原因で家賃を滞納している場合の事態解決のヒントについて解説します。

家賃滞納で強制退去させられないのは3ヵ月までが目安

家賃を滞納した場合、大家や管理会社によって強制退去させられないのは3ヵ月まで、というのが一つの目安です。
これは、1~2ヵ月の滞納では、物件を借りている賃借人が家賃を支払えない背景としてさまざまな事情があると考えられるためです。
たとえば病気やケガ、解雇などによる一時的な収入の減少、家庭の事情などもあるかもしれません。

そもそも物件を貸している賃貸人が賃貸借契約を解除しようとする場合、賃借人とのあいだで「信頼関係を破壊した」といえるほどの契約違反があったかどうかがポイントとなります。
過去の裁判例を見ても、多くの場合、1~2ヵ月程度の滞納では信頼関係が破壊されたとまではいえないと判断されて、強制退去は認められていません。

しかし、3ヵ月以上の滞納が生じたとなると状況が変わります。
滞納が3ヵ月続いたという事実があると、賃貸人と賃借人とのあいだの信頼関係がすでに大きく崩れていると判断されることが多く、裁判でも強制退去を認める判断が下されやすくなります。
3ヵ月という期間を超える滞納は、単なる一時的な支払い困難とは異なり、持続的な支払い不履行の証拠となりえるためです。

強制退去以外の家賃滞納のリスク

強制退去がすぐに行われないからといって、1~2ヵ月なら家賃滞納をしてもいいというわけではありません。
家賃滞納によって、下記のような事態が発生するリスクがあります。

連帯保証人に連絡がいく

家賃を滞納すると、賃貸借契約時に契約書に記載した連帯保証人に、未払いという状況が通知される可能性があります。
場合によっては、通知を受けた連帯保証人が、契約に基づいて未払い分の家賃を支払うよう求められるケースもあります。

連帯保証人として指定しているのは、親や親戚、友人などが多いでしょう。家賃の滞納をその人に知られ、迷惑をかけることになるのは、賃借人にとっても望ましくない事態のはずです。

信用情報機関のブラックリストに記載される

家賃滞納が将来の信用に関わるリスクをもたらすこともあります。特に、部屋を借りるときに保証会社を利用した場合には注意が必要です。
保証会社の役割は、賃借人が家賃を滞納したときに、代わりに支払いを行うことです。
これは賃借人、賃貸人双方にとって便利な仕組みですが、実際に滞納が発生すると、保証会社によってその事実が信用情報機関の管理する信用情報に登録されることがあります

一般的に、滞納の事実が登録される可能性が高まるのは、家賃を滞納してから2ヵ月ほどです。
滞納情報が、ネガティブな情報を意味する「異動」として記録されると、事故情報が登録された(いわゆるブラックリストに載った)状態となります。

事故情報が登録された状態では、クレジットカードの新規申込みやローンの利用など、さまざまな金融サービスで審査に通過しづらくなります。
さらに、現在持っているクレジットカードが利用停止になることがある点にも注意しなければなりません。
スマートフォンを購入する際の分割払いも利用できなくなり、別の賃貸物件を借りるときに再び保証会社を利用することも難しくなります。

遅延損害金が発生する

家賃を滞納していると、滞納している期間に応じて遅延損害金が加算されていきます。この遅延損害金の利率は、通常、賃貸借契約書に記載されています。

家賃の遅延損害金の利率の上限は年14.6%と法律で定められていますが、仮に14.6%であれば、その利率はクレジットカードのショッピング枠や銀行のカードローンなどの利息と同等の高金利です。
しかも多くの場合、賃貸借契約書はこの14.6%で設定されています。
なお、賃貸借契約書に何も記載されていない場合は原則として年3%で計算します。

遅延損害金は下記の計算式で算出することが可能です。

<遅延損害金の計算式>
加算金額=滞納家賃×遅延損害金の利率(最大年14.6%)×滞納日数÷365日

例として、8万円の家賃を3ヵ月(92日間)滞納し、遅延損害金の利率が14.6%であった場合は、遅延損害金の金額は下記のように計算できます。

<遅延損害金の計算の具体例>
8万円×14.6%×92日÷365日=2,944円

家賃滞納から強制退去までの流れ

家賃滞納

家賃を滞納した場合、強制退去に至るまでにいくつかのステップがあります。最初に督促の連絡から始まり、下記のような流れで事態が進むのが一般的です。

督促の連絡から強制退去までの流れ

  1. 大家や管理会社からの電話・督促状での連絡
  2. 保証会社を利用している場合、保証会社が立替払いをして、以後の督促などは保証会社が行う
  3. 連帯保証人への連絡と督促
  4. 滞納から3ヵ月程度で内容証明郵便による「契約解除通知」が届く
  5. 裁判などの法的手続
  6. 強制退去や給与などの差押え

家賃を滞納しそうな場合の対応策

強制退去やそのほかのリスクを回避するためには、家賃の支払いが難しい状況に直面した際にできるだけ早く対応しなければなりません。
下記の3点のような対応策を実行しましょう。

大家・管理会社への相談

家賃を滞納しそうになったら、できるだけ早く大家や管理会社へ連絡をとり、状況説明と相談をしてください。
率直に事情を話して支払いが難しい状況である旨を伝えれば、理解を得られる可能性があります。

たとえば、突発的な出費や収入の減少など、家賃滞納の原因が一時的な事情によるものなら、それを伝えれば支払いまでの時間的猶予をもらえる可能性があります。
なかには、分割での支払いに応じてくれる大家や管理会社も存在します。

逆に、何も伝えないまま家賃を滞納すれば、疑心暗鬼を生み、厳しい督促や法的手段への移行などを招きかねません。
まずは謝罪して、誠実に状況を伝え、解決策を模索したいという姿勢を見せることが大切です。

家族などからの一時的な借入の検討

支払いを待ってもらっても家賃分の金額を用意できそうにない場合は、家族や親しい友人に借入を申し出るのも一つの方法です。
家族などなら、低金利や無利息でお金を貸してもらえる可能性があります。

それも難しい場合は、キャッシングや金融機関からの借入を検討するかもしれません。しかし、消費者金融などからの借入は金利が高く、返済の負担が増大するおそれがあります。
一時的な困難を解決するための手段として利用する際には、返済計画をしっかりと立て、状況をさらに悪化させないよう慎重に判断することが重要です。

公的支援制度の活用

家賃の支払いが困難になったときには、公的な支援制度を利用できる可能性もあります

たとえば、住居確保給付金は、離職・廃業後から2年以内の人などを対象に、家賃額を支給する制度です。
実際の家賃額が原則3ヵ月間支給され、2回まで延長できるため、最大9ヵ月間分の支給が受けられます。

また、生活福祉資金貸付制度を利用すると、低利または無利子で生活に必要な資金の貸付を受けることができます。
対象者は、低所得者や高齢者、障害者などに限られますが、利用できそうな場合は積極的に検討しましょう。

借金が原因で家賃を滞納している場合は債務整理も必要

時効

家賃の滞納の背景にはさまざまな事情があると考えられますが、借金が原因となっている場合は、根本的な解決策を考えなければなりません。
特に複数の業者から借金をして返済が困難になっているようなケースでは、借金を整理しなければ家賃滞納を繰り返してしまう可能性が高くなります。
その場合は、債務整理という方法を検討するべきです。

債務整理の種類

債務整理には、主に任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法があります。

任意整理

任意整理は、裁判所を介さずに債権者と直接交渉を行い、返済計画や返済金額を再設定する方法です。
債務整理と混同されやすい用語ですが、債務整理の一種であり、3~5年間での完済を目指します。

任意整理について詳しくは、以下のページをご覧ください。

個人再生

個人再生は、裁判所の関与のもとで返済計画を立て直し、一部の借金を免除してもらう方法です。住宅などの財産を残すことができ、借金を最大5分の1から10分の1に圧縮できる可能性があります。

個人再生について詳しくは、以下のページをご覧ください。

自己破産

自己破産も、裁判所を介した手続で、借金の支払いは原則として全額免除されますが、住宅や車といった高額な財産はすべて処分されます。

自己破産について詳しくは、以下のページをご覧ください。

どの方法が適しているかは、債務の総額や収入状況、つまりどの程度の返済が可能かといった事情などによって異なります。

そのほかの債務整理の基本的な知識について詳しくは、以下のページをご覧ください。

債務整理での滞納家賃の取扱い

借金があって家賃も滞納している状況で債務整理を利用した場合、滞納家賃については、利用する制度によって取扱いが異なります。

自己破産・個人再生を選択した場合

自己破産・個人再生を選択した場合には、家賃の滞納分は免除してもらうことが可能です。
ただし、家賃の滞納分を免除してもらうということは、家賃を支払わないということを意味します。前述のとおり、長期間にわたり家賃を支払わない場合には賃貸借契約を解除され、強制退去させられてしまうこともあります。そのため、手続中も現在の住居に住み続けるためには、少なくとも手続開始後の家賃を支払わなければなりません。手続開始前の家賃をどうするかについては、破産法上の「偏頗(へんぱ)弁済」という制度とも関連して法的な判断が必要なため、手続を依頼する弁護士にご相談ください。
家賃の支払いを継続していれば、手続完了後も、大家から引き続き居住する許可を得られる可能性が高くなります。

任意整理を選択した場合

任意整理を選択した場合も、滞納家賃に関する減額交渉をすることは可能ですが、交渉により大家との信頼関係が崩れ、退去を求められるリスクもあります。
そのため任意整理においては、クレジットカードや消費者ローンなど、ほかの債務の整理を優先的に進めるほうが賢明です。

債務整理の相談相手は弁護士がおすすめ

債務整理を進めるには、3つのうちのどの方法を選択するにしても、破産法や民事再生法といった法律に関する専門知識が不可欠です。加えて金融機関や貸金業者との交渉も必要となります。
そのため、これらをスムーズに行うには弁護士に相談するのがベストな方法です。

弁護士が債務整理の交渉窓口としての活動を始めると借金の督促や返済が一時的に停止できるため、精神的負担が軽減されて安定した状態で債務整理に向き合うこともできるようになります。
さらに、金融機関との交渉や手続のすべてを弁護士に任せられるので、自力で対応するよりも確実かつ迅速に債務整理を進められます。

家賃滞納時には、公的支援制度などを活用しつつ弁護士にも相談しよう

家賃を滞納せざるを得ないときは、まずは早めに大家や管理会社に連絡をとって、支払方法について相談してください。
そのうえで、自身の状況に応じて公的支援制度などの活用も検討しましょう。

借金が家賃滞納の原因となっている場合は、弁護士にアドバイスを求めることが有効です。債務整理の方法を検討し、借金問題を根本的に解決できれば、家賃の支払いに悩むことのない生活を取り戻せます。

アディーレ法律事務所では、豊富な借金問題解決の実績をもっており、状況に応じた最適な債務整理の方法をご提案することが可能です。借金問題にお困りの場合は、お一人で悩まずに、ぜひご相談ください。

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監修者情報

谷崎 翔

弁護士

谷崎 翔

たにざき しょう

資格
弁護士
所属
第一東京弁護士会
出身大学
早稲田大学法学部,首都大学東京法科大学院

困りごとが起きた時,ひとりで考え込むだけでは,どうしても気持ちが暗い方向に向かいがちで,よい解決策も思い浮かばないものです。そのようなときは,ひとりで抱え込まないで,まず専門家に相談することが,解決への近道ではないでしょうか。どのようなことでも結構ですので,思い悩まずにご相談ください。依頼者の方々が相談後に肩の荷を降ろして,すっきりとした気持ちで事務所を後にできるよう,誠心誠意力を尽くします。

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