債務整理後に住宅ローンは組める?返済中に任意整理や自己破産をするとどうなるかについても解説
- 更新日: 2024年07月03日
あなたが債務整理を行った場合、基本的には新たな借金ができません。
住宅ローンも銀行などからの借金ですので、新たな住宅ローンを組んで家を購入することはできなくなります。
ただし、債務整理をしたからといって、永久に住宅ローンを組めないわけではありません。
本記事では、債務整理後に住宅ローンが組めない理由とその期間、債務整理後に住宅ローンを組みたい場合の対応策について解説します。
また、住宅ローンを返済中の方が債務整理をしたい場合の対応策や、実例についても解説します。
債務整理後は、原則として5~7年は住宅ローンが組めない※
債務整理を行うと、返済に苦しんでいた日常に明るい変化が訪れます。
しかし、引き換えに、信用情報機関に事故情報(債務整理を行ったという情報)が登録されてしまいます。いわゆるブラックリストに載った状態です。
事故情報が消えるまでの一定期間は、住宅ローンを組むことができません。また、その登録期間は債務整理の手続ごとに異なります。
ここでは、債務整理後に住宅ローンを組めない期間について、手続ごとに見ていきましょう。
※2022年11月4日以前に手続した場合は5~10年間。
任意整理の場合
任意整理では、利息のカットや長期分割払いの交渉をカード会社等と行い、原則3年(最長5年)の返済計画に従って借金の元金を返済していきます。任意整理により、月々の返済額が手続前の3分の1から半額近くまで減額された事例もあります(※)。
なお、任意整理を行った場合、事故情報が信用情報機関に登録される期間は、借金を完済してから5年程度です。 ですから、あなたが任意整理を行った場合、完済から5年程度は住宅ローンを組むことができなくなります。
※どれぐらい減額されるかは状況や条件等によります。
個人再生の場合
個人再生では、借金を返済できないおそれがあることを裁判所に認めてもらい、大幅に減額された借金を3年(原則)から5年で返済していきます。個人再生を行うと、月々の返済額が手続前の5分の1程度にまで減額される場合があります。
なお、個人再生を行った場合も、事故情報は信用情報機関に登録されます。信用情報機関は全部で3種類あり、銀行や信用金庫などが加盟する信用情報機関(KSC)への登録期間は7年間です(※)。
住宅ローンを組む場合、銀行や信用金庫などを利用するのが通常です。そのため、あなたが個人再生を行った場合には、その後7年間は住宅ローンを組むことができません。
※2022年11月4日以前については10年間。
自己破産の場合
自己破産では、財産や収入が不足して支払不能なこと(借金返済の見込みがないこと)などを裁判所に認めてもらうことにより、原則として借金の支払義務が免除されます。
なお、自己破産を行った場合も、事故情報は信用情報機関に登録されます。KSCへの事故情報登録期間は、個人再生を行ったときと同様に7年間です(※)。
あなたが住宅ローンを組む際も銀行や信用金庫などを利用すると思います。ですが、自己破産を行ったあと7年間は住宅ローンを組むことができませんので、ご注意ください。
※2022年11月4日以前については10年間。
債務整理を行った銀行などでは、ずっと住宅ローンを組めない可能性あり
債務整理を行った銀行などの金融機関やその関連会社は、社内で顧客データを共有していることが多いです。その場合、あなたが債務整理を行ったという情報も住宅ローンを申し込んでも審査に落ちてしまう可能性が高いです。
ですから、債務整理をしたあとに住宅ローンを組む場合には、債務整理を行った金融機関やその関連会社を避けるのがおすすめです。
債務整理後に住宅ローンを組みたい場合はまず事故情報の確認
債務整理後に住宅ローンの審査を申し込む場合、まず信用情報機関に事故情報が登録されているかを確認します。下記の3つの信用情報機関に情報開示を行いましょう。
なお、情報の開示方法は各信用情報機関のWebサイトで調べることができます。
事故情報が登録されているときに住宅ローンを組む方法
「事故情報が登録されていても、どうしても住宅ローンを組みたい」という方のための対応策として、3つの方法をご紹介します。
配偶者名義で住宅ローンを組む
債務整理を行った方の配偶者が住宅ローンを組むことは問題ありませんし、子どもについても同様です。
ただし、債務整理を行った方を含めてのペアローンを組むことはできないこと、債務整理を行った本人は保証人にもなれないこと、などの点に注意が必要です。
連帯保証人を立てる
通常、住宅ローンを組む場合には連帯保証人は不要です。
しかし、債務整理を行った方の場合、住宅ローンが回収できないリスクがあるため、住宅ローンを組むことができません。
ですが、経済力のある人に連帯保証人になってもらうことができれば、事故情報が登録されている間でも住宅ローンを組める可能性が出てきます。
ただし、あくまでも可能性が出てくるというだけで、住宅ローンを組めない可能性が高いことに注意が必要です。
頭金を用意する
ある程度まとまった金額の頭金を用意することで、住宅ローンの金額を減らせるため、住宅ローンを組める可能性が高まります。
ただし、こちらの場合も可能性が出てくるというだけで、住宅ローンを組めない可能性が高いということを覚えておきましょう。
住宅ローンの返済中に債務整理をしたい場合
住宅ローンを組んだあとに返済が苦しくなり、債務整理が必要となることもあり得ます。
ここでは、住宅ローンの返済中でも債務整理で借金問題を解決できるのかどうか、について解説します。
任意整理であれば、住宅ローンを除外して手続できる
任意整理では、手続を行うカード会社を選ぶことが可能です。
そのため、住宅ローンについては任意整理の対象から除外して通常どおり返済を続け、住宅ローン以外の借金のみ任意整理を行うことが可能です。
以上のようなことから、任意整理は、住宅ローン以外にも借金があり、自宅を残したまま借金問題を解決したい方におすすめです。
個人再生でも、住宅を残して手続できる方法がある
「任意整理では借金問題の解決が難しいけれど、自宅は残したい」という方は、個人再生を検討しましょう。
個人再生では通常、住宅ローン以外の借金は一定の決まりに従って減額されますが、借金に担保が付けられている場合、その担保権を実行されてしまいます。
もし住宅ローンが減額されるのであれば、抵当権の付けられている自宅を失ってしまうということになります。
しかし、個人再生では「住宅資金貸付債権に関する特則」が利用できます。これは、「住宅資金特別条項」とも言われており、一定の条件を満たす場合に、住宅ローンについて再生計画による一律の減額、支払期間の延長を受けないものとするものです。
これにより、住宅ローンをほかの借金とは別扱いにし、利息、元金、遅延損害金の全額(または債権者の同意が得られた金額)を返済することが可能となります。よって、自宅を残したままで借金を返済することができるのです。
自己破産では借金はなくなるが住宅は残せない
自己破産を選択した場合、借金問題を解決することは可能ですが、自宅を残すことは難しいです。
自己破産では、原則すべての借金が免除されますが、代わりに一定額を超える資産は処分のうえ債権者に分配されてしまうからです。
住宅ローンが残っており、自宅に抵当権が付けられている場合には、抵当権者により競売にかけられます。また、住宅ローンが残っていない場合にも、自宅は裁判所から選任された破産管財人によって換価処分をされてしまうのです。
なお、「自己破産まではしたくない」と考えている方には、住宅を売却して借金を整理する「任意売却」という方法もあります。ただ、自己破産と任意売却のいずれを選択しても住宅を残すことはできませんので、慎重な判断が必要です。
住宅ローン返済中に債務整理で借金問題を解決できた事例
アディーレに債務整理をご依頼いただいたことで、住宅ローン返済中でも借金問題を解決できた事例をご紹介します。
Tさん(60代男性)の事例
住宅ローンの返済中、パチンコと競馬にのめりこみ、借入を開始したTさん。自動車もローンで購入し、住宅ローン以外の借金が約490万円にまで膨らんでしまいました。
住宅の維持を希望されていたものの、支払額が高額になるため、任意整理での手続は厳しいと判断。個人再生の手続を行った結果、自宅を維持したまま借金を減額でき、月々の返済が楽になりました。
月々の返済額 | 相談時:12万4,000万円 → 手続後:27,000円 |
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借金総額 | 相談時:490万円 → 手続後:100万円 |
- ※事例の内容はご相談当時の状況や条件等によります。
債務整理による住宅ローンへの影響で悩んだら、弁護士に相談しよう
これまでご説明したとおり、債務整理をしたあとでも、事故情報の登録期間が経過すれば住宅ローンを組むことが可能ですし、登録期間中でも配偶者名義を使うなどの方法で住宅ローンを組める可能性があります。
また、住宅ローンの返済中に返済が苦しくなった場合でも、住宅を残しながら借金問題を解決できる道が残されています。
もし、あなたご自身で判断されるのが難しいなら、弁護士に相談されることをおすすめします。どの方法が適しているかは、借金の額や収入・財産の状況によって異なるため、経験豊富な弁護士に相談するのがベストです。
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監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 第一東京弁護士会
- 出身大学
- 早稲田大学法学部,首都大学東京法科大学院
困りごとが起きた時,ひとりで考え込むだけでは,どうしても気持ちが暗い方向に向かいがちで,よい解決策も思い浮かばないものです。そのようなときは,ひとりで抱え込まないで,まず専門家に相談することが,解決への近道ではないでしょうか。どのようなことでも結構ですので,思い悩まずにご相談ください。依頼者の方々が相談後に肩の荷を降ろして,すっきりとした気持ちで事務所を後にできるよう,誠心誠意力を尽くします。