法律を利用して採算部門に特化

「負債のリストラ」をしてもそれだけでは事業は再生しません。真の再生を果たすためには事業そのものを見直していくことが必要不可欠です。しかし、事業の見直しとは具体的にはどのように行うのでしょうか?

この不景気で売上を増やすことはそう簡単ではありません。新規事業を行う資金的余裕もないでしょう。また、経費の削減もかなりの部分をやりつくしているはずです。つまり、事業の規模を拡大したり、これ以上経費を削減するという方向での事業の見直しは現状では難しいのです。

中小企業の再生に必要なのは規模の経済ではなく、まず採算性の回復です。採算性の低い事業や商品からは潔く撤退し、規模を縮小しつつも、高い採算性を維持して業績を回復する、いわゆる「選択と集中」がこの不況下に適した事業再生方法といえます。ここでは、法律を利用して不採算部門の切り離しを行い、事業の再生を果たす方法・ノウハウをご紹介します。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の営業(営業に必要な一切の有形無形の財産)をほかの会社に譲渡することをいいます。事業譲渡では、個々の営業のみを移転させることもできますし、負債や従業員、取引先との契約関係も併せてすべてを移転させることも可能です。

事業譲渡による事業再生事例

たとえば、会社が採算性の良いA事業と採算性の悪いB事業を行っていた場合、B事業の同業者であるC会社にB事業を譲渡してしまえば、会社は採算性の良いA事業だけとなり、またB事業を譲渡した代金も得られることから、会社は採算性と財務内容が同時に改善されることになります。C社としても同業を営んでいるため、スケールメリットを得られるという利点があります。

また、あなたの会社が採算性の良いA事業と採算性の悪いB事業を行っていた場合、あなたが株主となって新たな別会社Cを設立し、C会社に採算性の良いA事業を譲渡するという方法もあります。C社は採算性の良いA事業のみを譲り受けるわけですから、新会社の下で採算性の良いA事業を継続してゆくことができます。この場合、元の会社は清算することになります。

債務整理にも使える事業譲渡の事例

さらに、事業譲渡は、選択と集中を実現するだけでなく、債務を整理する方法としても有効です。たとえば、あなたの会社が3億円の負債を負っている場合、あなたが株主となって新会社を設立し、金融機関の合意を得たうえで会社の財産をすべて新会社に5千万円で譲渡します。3億円の負債は旧会社に残したまま破産し、新会社から旧会社に入る譲渡代金5千万円で配当を行い、旧会社を清算させます。新会社は、金融機関からの負債を引き継ぎませんから、財務内容が良好となります。金融機関としては、3億円の貸付から5千万円しか回収できないことになりますが、旧会社は法的整理を行うため残額はすべて無税償却ができます。

また、今後貸付先となっていく新会社は、財務内容が良好な正常貸付先となりますから、金融機関としても多額の引当金を計上する必要がなくなり、不良債権処理と優良貸付先を同時に確保することができるのです。

事業譲渡は、破産・民事再生や賃貸借契約、抵当権対策などと組み合わせることにより、さまざまな活用方法があります。現在、大企業だけでなく、中小企業においても、事業譲渡を活用して事業の再生を果たすケースが多くなってきています。

会社分割

会社分割とは、ある会社を分割して2つの会社に分けることです。たとえば、A会社の一部門であるB事業を分割し、B会社としてA会社の100%子会社にしたり(これを「物的分割」といいます)、A会社からB事業を分割してB会社とし、B会社株式をA会社株主に割り当てて、A会社とB会社を兄弟会社にしたりすることです (これを「人的分割」といいます)。

会社分割説明図

会社分割は2001年より導入された事業再生の方法で、事業譲渡の弱点を補い、より選択と集中をやりやすくする方法です。事業譲渡では、負債や契約、従業員を譲渡する場合、個別の同意を得る必要があり、この個別同意が事業譲渡を行う際の足かせになっていました。会社分割では、各関係人の保護手続を設ける代わりに個別の同意を不要として包括承継ができるようになりました。

また、一定の場合には税金の減額なども認められており、事業再生のための切り札のひとつとして登場した制度でもあります。もっとも会社の状況によっては会社分割よりも事業譲渡が有利な場合もありますから、どちらの方法をとるかは弁護士に相談することをおすすめします。会社分割を使うことで事業譲渡と同じように事業の再生や負債の整理を行うことが可能となります。

たとえば、不採算部門を物的分割によって本体から切り離したあと、ほかの会社に分割後の株式を売却すれば採算部門に特化することができます。また、人的分割によって、採算部門と不採算部門を別会社とし、採算部門の事業に力を注ぎ、不採算部門は債務整理を行うという方法もあります。
会社分割は、事業譲渡の弱点をカバーし、事業の再生を促進させる有力な方法といえます。

EBO

EBO(エンプロイ・バイ・アウト)とは、事業の一部を従業員に売却して、事業のスリム化を図る方法です。わかりやすくいえば、従業員を買い手とした事業譲渡のことです。
エンプロイは従業員、バイ・アウトは買い取りを意味します。

英語にすると仰々しいのですが、経営に窮した中小企業では、古くから行われてきた再生の方法です。その部署を担当している従業員であれば、部署のことをよく理解していますから、第三者に譲渡するよりも譲り渡したあとの経営が安定します。そのため第三者に譲渡するよりも譲渡価格が高額となることが期待できます。従業員にまとまったお金がない場合は、共同で購入する、第三者から従業員が借入をする、第三者が譲渡後の新会社に一部出資するなどの方法をとるなどがあります。もっとも、ある程度の採算性が見込める部門でなければ従業員も譲り受けに躊躇しますから、このような場合、譲渡後の新会社と業務委託契約を結んで業務を委託し、安定した仕事を新会社に供給することを約束する等の方法をとることになります。

合併

合併とは、2つの会社が統合し、1つの会社になることをいいます。これまで2つの会社が有していた権利義務はすべて合併後の新会社に引き継がれることになります。会社が合併した場合、各企業の企業価値に応じて、旧株主に新会社の株式が割り当てられます。

たとえば、A会社とB会社が合併し、C会社ができた場合、A会社とB会社の合併比率が1:2であったとすると、旧A会社の株主と旧B会社の株主にC会社の株式が1:2の割合で割り当てられることになります。合併を行うと経営者は事業を手放すこととなるため、自らが事業を継続して再生するという観点からは合併はあまり適さない方法です。しかし、経営者は、新会社の経営者ではなくなりますが、合併後もしばらくは新会社の従業員もしくは取締役として旧会社の事業の舵取りをすることが比較的多いようです。また、割り当てられた新会社の株式を売却して新たな事業資金とすることもできます。

新事業が成功すれば、合併によって新会社に吸収された事業を買い戻すことも可能です。
他社からの申し入れがある場合、事業再生のひとつの方法として合併を検討してもよいでしょう。

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