自己破産しても賃貸住宅は借りられる?退去の必要性や入居審査の注意点を解説

自己破産しても賃貸住宅は借りられる?退去の必要性や入居審査の注意点を解説
  • 更新日: 2024年05月20日

自己破産をすると、借金がゼロになる代わりに一定の財産を手放す必要があり、少なからず生活に影響があります。

そのため、「賃貸住宅から立ち退かなければいけないのかな…」、「賃貸住宅を借りられなくなるのでは?」と不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、原則として、自己破産しても賃貸住宅から立ち退く必要はありません。また、新たに賃貸住宅を借りることもできます。
ただし、状況によっては賃貸借契約を解除されることや、入居審査に通りにくくなることもあるため注意が必要です。

本ページで、自己破産が賃貸借契約に与える影響や、自己破産後に賃貸住宅を借りる際の注意点、入居審査に通らない場合の対処法について詳しく見ていきましょう。

自己破産をしたあと賃貸住宅を追い出されることはある?

自己破産をしたあと賃貸住宅を追い出されることはある?

自己破産をしても、原則として、現在お住まいの賃貸住宅から追い出されることはありません。
法律上、「自己破産したこと自体」を理由として、賃貸借契約を解除することはできないためです。

ただし、以下のようなケースでは賃貸借契約を解除されることがあります。

  • 家賃を滞納している場合
  • 収入に対して家賃が高すぎる場合
  • 賃貸保証会社を利用している場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

家賃を滞納している場合

自己破産の手続で免責が認められた場合、滞納している家賃の支払義務はなくなります。
このとき一定期間家賃を滞納していると、「家賃の滞納」を理由に賃貸借契約を解除されるおそれがあるため注意が必要です。

しかし、契約を解除されると困るからといって、滞納している家賃だけを支払ってはいけません。特定の債権者だけに返済を行うと、裁判所に不平等な返済(偏頗弁済)であると判断され、手続に支障が出るおそれがあります。

そのため、家族などの第三者に滞納している家賃を代わりに支払ってもらうなどの検討が必要です。

また、場合によっては優先的な返済が許されることもあるため、自己判断で滞納している家賃を支払わず、自己破産をする際に弁護士に相談することをおすすめします。

収入に対して家賃が高すぎる場合

収入に対して不相応に家賃が高すぎる場合、家賃を滞納していなくても、自己破産の手続において賃貸借契約を解除しなければならないことがあります。

これは、家賃が高すぎる賃貸住宅に住んでいると、自己破産によって借金がゼロになったとしても、家計を改善し生活を立て直すことが難しくなるためです。
「家賃が高すぎる」と判断された場合、破産管財人により賃貸借契約が解除される可能性があります(破産法第53条)。

なお、家賃の目安は手取り収入の3分の1程度とされることが一般的です。
高すぎる家賃の賃貸住宅に住んでいる場合は、契約を解除されなかったとしても、生活を立て直すために引っ越しを検討したほうがよいケースもあるでしょう。

賃貸保証会社を利用している場合

賃貸住宅を借りるときは、万が一家賃の滞納が発生したときのために、賃貸保証会社(家賃保証会社)と契約を結ぶことが一般的です。
賃貸保証会社を利用して賃貸住宅を借りている場合、すぐに契約解除とはならなくても、契約更新ができないおそれがあります。

賃貸保証会社は、入居を申し込んだときだけでなく賃貸借契約を更新するときにも審査を行うためです。

更新時の審査に通らなかった場合は、ほかの賃貸保証会社や連帯保証人をつけられるかどうか、不動産会社や賃貸人(大家)に確認する必要があります。

自己破産後も新たに賃貸住宅を借りられる?

自己破産後も新たに賃貸住宅を借りられる?

自己破産の手続後、新たに賃貸借契約を締結して住宅を借りることは可能です。法律上も、自己破産後の賃貸借契約の締結は禁止されていません。

ただし、賃貸保証会社による入居審査がある場合、「家賃の支払能力に不安がある」と判断され賃貸借契約ができないことがあります。
特に以下の2つのケースでは、入居審査に通らない可能性が高いため注意が必要です。

信販系の賃貸保証会社を利用するケース

自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録されます。

主にカード会社などが運営する「信販系」と呼ばれる賃貸保証会社は、信用情報機関に登録されている情報をもとに審査するため、入居審査に通らない可能性があるでしょう。

信販系の主な賃貸保証会社は、以下のとおりです。

  • 株式会社アプラス
  • 株式会社エポスカード
  • 株式会社オリコフォレントインシュア
  • 株式会社ジャックス
  • 株式会社セゾン
  • SMBCファイナンスサービス株式会社
  • ライフカード株式会社 など

過去に家賃を滞納していたケース

家賃を滞納した情報は、LICC(全国賃貸保証業協会)という団体により記録され、債務が消滅してから5年間保管されます。

そのため、賃貸保証会社がLICCに加盟している場合、滞納した情報が保管されている間は、入居審査に通らない可能性があるでしょう。

LICCに加盟している主な賃貸保証会社は、以下のとおりです。

  • アーク株式会社
  • 株式会社アルファー
  • エルズサポート株式会社
  • K-net株式会社
  • 興和アシスト株式会社
  • ジェイリース株式会社
  • 全保連株式会社 など

入居審査に通らない場合に賃貸住宅を借りる方法

入居審査に通らない場合には、以下のような方法を検討する必要があります。

独立系の賃貸保証会社を利用できる物件を選ぶ

賃貸保証会社のなかには、事故情報や滞納情報を調査せず、独自の基準で審査をしている会社もあります。このような賃貸保証会社は、「独立系」と呼ばれることが一般的です。

信販系やLICC加盟の賃貸保証会社ではなく、独立系の賃貸保証会社が利用できる物件を選ぶことで、賃貸住宅を借りられる可能性があります。

利用できる賃貸保証会社は不動産会社などによって指定されていることが多いため、事前に確認したほうがよいでしょう。

連帯保証人を立てる

賃貸保証会社を利用せず、連帯保証人を立てることでも賃貸住宅を借りられる可能性があります。
ただし、あなたが家賃を滞納した場合、連帯保証人が代わりに家賃を支払わなければなりません。

また、誰でも連帯保証人になれるわけではなく、以下のような条件を求められることもあるようです。

  • 安定した職業に就いているなど家賃の支払能力がある
  • 国内に住んでいる
  • 2親等以内の親族(親、兄弟、祖父母、孫)、または3親等以内の親族(叔父・叔母)など

このように、一般的には家族や親族に連帯保証人になってもらう必要があります。

家族名義で契約してもらう

ご自身の名義で賃貸借契約ができない場合、入居審査を通過できそうな家族・親族の名義で契約してもらうのも一つの手段です。
配偶者や親などが契約者となることで、賃貸住宅を借りられる可能性があります。

ただし、同居しない家族・親族が不動産会社や賃貸人の同意を得ず契約者となることは、賃貸借契約違反になるおそれもあるため注意が必要です。
事前に「代理契約」が可能かどうか確認しておきましょう。

公営住宅を借りる

公営住宅とは、自力で住宅を確保できない世帯に対し賃貸住宅を供給することを目的に、地方公共団体が建築または建築を補助した住宅のことです。
賃貸保証会社や連帯保証人が不要であるため、自己破産をしても賃貸借契約をしやすいといえます。

公営住宅は、その目的から家賃が比較的安く設定されています。そのため、自己破産をしたあと家計を改善するのにも役立つでしょう。

ただし所得制限や入居条件が定められているため、誰でも借りられるわけではありません。
詳しくは、各自治体のホームページなどをご確認ください。

UR賃貸住宅を借りる

UR賃貸住宅とは、都市再生機構(UR都市機構)という独立行政法人が管理・運営している賃貸住宅です。
賃貸保証会社や連帯保証人が不要であるため、自己破産をしても賃貸借契約をしやすいといえます。

またUR賃貸住宅は、礼金や仲介手数料、更新料がかかりません。
そのため、自己破産をしたあと、まとまったお金が用意できない場合に選択肢の一つになるでしょう。

ただし、申込条件に基準月収額が定められており、収入が低いと利用できません。
また、地域や間取りなどによっても異なりますが、家賃が比較的高めに設定されていることがあります。
入居費用は安く抑えられても家賃が支払えないということになりかねないため、注意が必要です。

賃貸住宅への影響が心配で自己破産するかお悩みなら、弁護士にご相談を

自己破産をすると例外的に契約を解除しなければならないケースや、入居審査が厳しくなるケースはあります。しかし、賃貸住宅を借りられなくなるわけではないため、ご安心ください。

むしろ、賃貸住宅への影響を過度におそれて、安易に自己破産をしないという選択はすべきではありません。
何もしなければ、この先も返済に追われ続け、状況がどんどん悪化してしまいます。

そのため、賃貸住宅への影響が心配で自己破産をするか悩んでいるのであれば、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士であれば、あなたのご事情にあわせて、最適な解決方法をご提案できます。

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監修者情報

谷崎 翔

弁護士

谷崎 翔

たにざき しょう

資格
弁護士
所属
第一東京弁護士会
出身大学
早稲田大学法学部,首都大学東京法科大学院

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