自己破産できる条件とは?できない場合の対処法も合わせて解説
自己破産は、借金の支払義務が免除される手続です。
ただ自己破産して借金の支払義務が免除されるには、いくつか条件があります。
本ページで、自己破産の条件と支払義務の免除が認められなかった場合の対処法を見ていきましょう。
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個人が自己破産をするための条件
自己破産できる条件には、主に以下の2つがあります。
- 支払不能であること
- 「免責不許可事由」に該当しないこと
それぞれ詳しく見ていきましょう。
支払不能であること
まず自己破産は「支払不能であること」を、裁判所に認めてもらうことが必要です。
支払不能とは、すべての債権者(銀行やカード会社など)に対し、継続して借金が返済できない状態を指します。
支払不能かどうかは、次のような流れで考えます。
一般的に支払不能であるかの判断は、③において借入総額を36で割った金額が、月々の返済可能額を超えているか、つまり今の借入総額を、3年以内で完済できるかが目安となります。
ただし、裁判所は借金の総額、資産額、収入、年齢、家族構成など、さまざまな面から支払不能状態にあたるかを判断します。
たとえば不動産や車など価値のある財産を持っていて、それらを容易に売却できるような場合には、借入総額からその金額を差し引いた額について、返済できるかという検討も必要となります。
また、収入に見合わない支出は、適正な額としたうえで計算されます。
つまりゲームで月5万円を課金している場合など、その金額を借金の返済に充てれば完済を目指せるなら、支払不能とは判断されない可能性が高いです。
「免責不許可事由」に該当しないこと
自己破産は裁判所から、借金の返済義務を免除してもらう「免責(許可)」を受けることが目的です。
破産とともに免責許可の申立てしても、「免責不許可事由」に該当していれば免責が下りない可能性があります。
免責不許可事由とは、自己破産の際、原則として裁判所が免責を認めないと法律で規定された事情です。たとえば、次のようなケースが免責不許可事由に該当します。
- 債権者を害する目的で財産を隠す行為
- 特定の債権者にだけ返済する行為(偏頗弁済)
- ギャンブルやショッピング、株式投資やFXなどに多額の資金を費やす行為
- 自己破産を弁護士に依頼する間際に、新たな借り入れをする行為
- 裁判所や破産管財人に対して、虚偽の事実を報告する行為
- 前回の免責許可決定確定の日から、7年以内に免責許可を申立てる行為
ただし、このような免責不許可事由に該当しても、深い反省が見られるなど、裁判所が自身の裁量で免責を認めてよいと判断するケースも少なくありません。
そのため、自己破産の手続を行う際には、誠実に対応することが大切です。
自己破産には、免除されない債権もあるので注意
自己破産には免除されない債権もあります。それが「非免責債権」と呼ばれるものです。
次のものが非免責債権にあたり、支払義務が残ります。
- 租税などの請求権(破産法第253条1項1号)
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法第253条1項2号)
- 故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法第253条1項3号)
- 夫婦間の相互協力扶助義務に基づく請求権(破産法第253条1項4号イ)
- 夫婦間の婚姻費用分担義務に基づく請求権(破産法第253条1項4号ロ)
- 親族や子どもの扶養義務および監護義務に基づく請求権(破産法第253条1項4号ハ)
- 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権(破産法第253条1項5号)
- 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(破産法第253条1項6号)
- 罰金などの請求権(破産法第253条1項7号)
借金が非免責債権に該当するものしかない場合は、自己破産をしても借金の返済義務はなくなりません。そのため手続をするメリットはほとんどないと言えるでしょう。
自己破産ができない場合の対処法
自己破産には条件があるため、当然認められないケースも出てきます。そうした場合、どのように対応をすればよいのでしょうか。取るべき対処法について説明します。
異議申立てをおこなう
自己破産で免責が許可されなかった場合、異議の申立てができます(法的には「即時抗告」と呼びます)。
ただし即時抗告ができるのは、免責不許可の決定から1週間です。そのため免責不許可となったら、すぐに理由を確認しましょう。
もっとも、重大な免責不許可事由があることが明らかな場合には、即時抗告をしても免責不許可決定を覆せない可能性が高いです。
個人再生を検討する
自己破産が難しければ、別の債務整理の手続「個人再生」を検討してみるのも一つの手段となります。
個人再生とは、基本的に裁判所の認可決定を得て、借金総額が大幅に減額される手続です。残った借金は、原則3年間(最長5年間)で、分割して返済していくことになります。
一般的に借金減額の幅は自己破産より小さいですが、個人再生なら認められるケースもあり、借金の大幅な減額にもつながります。
任意整理を検討する
もう一つ、債務整理には「任意整理」という手続もあります。
任意整理では将来発生する利息のカットや返済期間の延長によって、月々の返済金額を減らすことが可能です。利息がカットされるため、借金総額は結果として減額となります。
月々の返済金額を減らせれば完済の見込みがある方などは、任意整理を視野に入れてもいいでしょう。
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自己破産には条件があり、当然認められないケースもあります。
失敗するリスクを考えずに自己破産の手続を進めてしまうと、「お金と時間だけかかって、すべての借金が残ってしまった」ということにもなりかねません。
そのため、自己破産がうまくいく見込みがあるかどうか、厳しい場合にはどうすればいいか、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
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このページの監修弁護士
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。