特定調停と任意整理との違い

特定調停と任意整理はそれぞれ次のような手続です。

  • ■特定調停
    裁判所が仲介役となって債務者と各債権者との和解の成立を支援する公的な手続
  • ■任意整理
    弁護士が債務者の代理人となって各債権者と和解交渉を行う私的な整理方法

そして、特定調停と任意整理には表のような違いがあります。

特定調停 任意整理
代理関係 原則として本人が行う(弁護士が代理人となることは可)。 弁護士が代理人として行う。
費用 1社あたり500円。 弁護士との契約により決まるが、通常は特定調停より高額。
借金の減額幅 利息制限法の上限金利による引き直し計算により減額される。将来の金利もカットされることがある。
※調停成立までの遅延損害金が加算される場合がある。
利息制限法の上限金利による引き直し計算により減額される。原則として将来の金利もカットできる。
和解成立までの遅延損害金は原則として加算されない。
※事情により、ごく稀に将来利息、遅延損害金が加算される場合がある。
債権者からの取立て 申立後は取立てがストップ。 弁護士に依頼後、ただちに取立てがストップ。
和解・調停の成立 債権者が同意しなければ調停不成立となり、ほかの手続を選択しなければならない。 和解の成立には債権者の同意が必要。ただし、ほとんどのケースで和解が成立する。
過払い金 過払い金の取戻しは行われないため、過払い金を考慮した調停をすることが困難。 過払い金の取戻しもできるため、返還された過払い金を踏まえた返済計画を立てることができる。
債務名義 調停調書は裁判の判決と同じ効力を持つため、返済ができなくなった場合にはただちに給料差押え等の強制執行をされてしまう可能性がある。 通常債務名義は作成されないため、返済ができなくなった場合でもただちに強制執行されることはない。

特に大きな違いである以下の3点について、詳しく解説していきます。

  • 取立てが止まる時期
  • 債務名義の有無
  • 解決までに本人が費やす時間

取立てが止まる時期

任意整理の場合は弁護士に依頼すればただちに取立てが止まるのに対し、特定調停の場合は裁判所に申し立てない限り、取立ては止まりません。
特定調停の申立てには、特定調停申立書のほか、関係権利者一覧表や財産の状況を示す明細書が必要になります。
そのため特定調停の場合だと、取立てが止まるまでに相当の期間がかかることも少なくありません。

債務名義の有無

特定調停の場合、合意が成立すると調停調書という書面を裁判所が作成します。
この調停調書は裁判の判決と同じ効力があるので(これを債務名義といいます)、債権者との合意どおりに支払うことができなかった場合、債権者は給料差押え等の強制執行をすることができます。
これに対し、任意整理の場合も、債権者と合意ができたら和解書という書面を作成しますが、これには判決と同じ効力はありません。
そのため、返済ができなくなった場合に、ただちに強制執行を受けることはありません。

解決するまでに本人が費やす時間

表には記載しておりませんが、特定調停と任意整理では解決までに本人が費やす時間も異なります。

任意整理の場合、弁護士が代理人としてすべての交渉・手続を行いますので、時間や手間をとられることなく、安心して仕事等に専念することができます。

これに対し、特定調停の場合、調停委員が仲介するとはいえ、基本的には本人が各債権者と交渉する必要があります。
しかも、債権者ごとに交渉をしなければならないため、1社あたり30分~1時間ほどかかることもあり、1回の調停に数時間を費やすこともあります。

特定調停が行われるのは1ヵ月に1回程度なので、合意が成立するまで数ヵ月かかります。
そして、裁判所は土日祝祭日には開廷していないため、調停に行くために何回か仕事を休まなければならないことが多いです。

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このページの監修弁護士

弁護士 谷崎 翔 アディーレ法律事務所

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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